お茶を生み出すツバキ科の植物『チャノキ』の正体とは?
- Text by Kazutaka Miura
「チャノキ」とは?
私たちが目にする、日本の茶畑に生育している緑色の植物は何なのでしょうか?
その植物の名前は「チャノキ」。煎茶やほうじ茶の原料となる「チャノキ」は、ツバキやサザンカと同じツバキ科の植物です。
まずは、「チャノキ」、ツバキ、サザンカを見比べてみましょう。
同じツバキ科の仲間だけあって、葉の形や色が似ています。
「チャノキ」は、ツバキやサザンカのように秋から初冬にかけて小さな花が咲きます。
「チャノキ」の植物としての正式名称は 「カメリア・シネンシス」。
厳密(植物分類学上)に言うと「茶」とは、この「カメリア・シネンシス(チャノキ)」から取れる葉や茎、芽を使った飲み物のことを指します。
そして、緑茶、紅茶、ほうじ茶、烏龍茶といったお馴染みのお茶は、このたった一種類の植物「カメリア・シネンシス(チャノキ)」の葉からすべてがつくられています。
ちなみに、ルイボスティーやごぼう茶、杜仲茶、マテ茶など、「チャノキ」以外の植物からつくられるお茶のことは、「茶外茶(ちゃがいちゃ)」とも呼ばれます。
チャノキは中国種とアッサム種
世界中で栽培されている「チャノキ」は大きくわけて、「中国種」と「アッサム種」の2種類になります。
日本で栽培されているのは「中国種」。「中国種」は、葉が小さく、長さが3~5cmほど。葉は薄く、丸みを帯びています。日本をはじめ、中国や台湾などで生育しています。
一方の「アッサム種」は、葉が大きく、10~18cm程度。葉は厚く、葉先が尖っていて、インドやスリランカ、アフリカ諸国などで栽培されています。
中国種は緑茶向きで、苦味成分「カテキン」の量が少なく、旨味成分となるアミノ酸が多いのが特徴。アッサム種は逆に、「カテキン」が多く、アミノ酸が少なく、紅茶に向くとされています。
数あるツバキ科の植物の中でも、この「中国種」と「アッサム種」の「チャノキ」は、栽培・加工するうえで、優れた点が多く、世界中に広まりました。
ほかのツバキ科の植物は、成長すると高さが十数メートルにも達して人間の手では茶摘みができません。しかし、「中国種」と「アッサム種」は、人の手で摘採できる高さまでしか成長しないのです。
さらに、ほかのツバキ科植物は、「カテキン」、「カフェイン」、「テアニン」という主要なお茶の成分の含有バランスが「チャノキ」より劣るという結果が出ています。
そのため、ツバキやサザンカなどの葉を使っても、チャノキのような甘味・渋味・旨味のバランスが取れたいい風味にはなりません。
過去には、「チャノキ」とツバキの交配種「チャツバキ」がつくられたこともありますが、「チャノキ」より品質が劣ってしまい、実用化には至りませんでした。
そのような植物「チャノキ」ですが、苗木を販売している会社もあり、自宅で育てることも可能です。
「チャノキ」は、寒さや暑さに強く、育てやすいことから、庭木や生け垣、鉢植えなどガーデニングのシーンでも利用されているそうです。
チャノキの苗木販売サイト「お茶の苗木ファーム」
https://www.ochanonaegi.com/