フランス人初の日本茶インストラクターが東京・谷中にオープン!
シングルオリジンの茶葉を集めた日本茶専門店『青鶴茶舗』

2018年8月、全国から仕入れたシングルオリジン(単一農園・単一品種)のお茶を中心に扱う日本茶専門店『青鶴茶舗(あおづるちゃほ)』が東京・谷中にオープンした。店主は、フランス出身の日本茶インストラクター、フローラン・ヴェーグさん(38)だ。

 

日本茶インストラクターは、日本茶に関する専門知識や技術を持った日本茶のスペシャリストと言える存在。試験の合格率は35%と言われ、日本人でも資格取得が容易ではないことで知られている。
フローランさんはその日本茶インストラクターの試験にフランス人として初めて合格し、これまで10年近く日本茶業界に携わってきた。今回は、そんなフローランさんのストーリーをお届けする。

フローラン・ヴェーグさん

 

―2005年、人生を変える日本茶と出合う

 

フローランさんは、故郷であるフランスの大学で日本の美術史を学んだのち、本格的に日本語を勉強するため、大学院に進む前に日本留学を決意。2005年に来日した。

 

「日本にやって来て、千葉県柏市でホストファミリーと暮らしながら学校に通っていました。そんなある日、デパートで開催されていた物産展で、ひとつの日本茶に出合いました。日本に来る前にフランスで日本茶を飲んだことはありましたが、そこまでおいしいと思ったことはなかったんです。しかし、そのお茶は違いました。本当においしかったんです」

 

その日本茶との予期せぬ出合いが、フローランさんの人生を変えた。

 

 

―日本茶がおいしく淹れられない

 

「物産展でおいしいと思って購入したお茶を家で飲もうとしたら急須がない。しょうがないので近所の100円ショップで急須を買ったのですが、いざ急須とお茶を前にしても、淹れ方がわからなかったんです。ホストファミリーは普段コーヒーを飲んでいて、お茶の淹れ方を知りませんでした。お湯の適温や茶葉の適量がわからないまま、それっぽい感じで淹れてみたのですが、物産展で飲んだ時のようなおいしさにはなりませんでしたね」

 

そのお茶と向き合った些細な経験が、フローランさんの好奇心に火をつけた。

 

「お茶がうまく淹れられなかった苦い経験がきっかけとなり、日本茶をおいしく飲むには一体どうしたらいいのだろうと、日本茶の本を買って勉強するようになりました。すると、どんどん日本茶がおもしろくなり、いつの間にかその奥深い世界に魅了され、虜になっていたんです」

 

日本茶に夢中になっていたフローランさんは、生まれ育ったフランスではなく、日本でお茶と共に生きると決めた。

 

―日本茶の世界で生きる

 

「留学生として日本で暮らす中で、将来的のことを考えた時、フランスに戻って日本美術史で博士号を取ってもフランスで就職先はなかなか見つからないだろうと感じていました。それだったら日本でもっとがんばってみようと思ったんです。学校を卒業してからは、日本でお茶とは関係のない仕事をしながら、趣味としてお茶に関わる中で、徐々にお茶バカになっていきました(笑)」

 

フローランさんは日本各地の産地を訪れ、日本茶への理解を深めていった

フローランさんは2009年、フランス人として初めて日本茶インストラクターの資格を取得。日本茶のプロフェッショナルとして着実にステップを踏んでいった。

 

そんなフローランさんがお茶屋で働き出すのは、自然な流れだった。日本茶インストラクターとなると、老舗日本茶専門店「丸山園本店」で販売の仕事をスタート。2014年に卒業するまで、日々お客さんに接し、専門的な日本茶の知識や接客の技術を習得していった。

 

―さらなる転機が訪れる

 

日本茶インストラクターになり、国内外に日本茶の魅力を発信していきたいと考えたフローランさんは日本茶の魅力を紹介するブログを開設した。

 

「当時、日本茶について正しく書かれたフランス語の情報がまったくなかったので、しっかりとした日本茶の情報をフランス語圏に発信するためにブログを立ち上げました。始めてから1年半ほど経ったある日、「お茶の販売を一緒にしませんか?」という一通のメールがブログに届きました。差出人は30年以上日本に住んでいるというフランス人でしたが、自分としてもいいチャンスだと思い、その人と一緒に海外向けのネット通販を始めました。最初はフランス語圏の国からの注文が多かったのですが、数年後には日本国内向けにもお茶を販売をするようになりました」

 

青鶴茶舗のウェブサイトには無数の日本茶情報が詰まっている

メールを送ったフランス人は、フローランさんのビジネスパートナーとして、二人三脚で現在まで歩んできた。

 

ブログで情報発信をし、ネット通販を行う一方で、フローランさんは全国各地で行われるお茶のイベントに出店し、お茶の販売を行い、ワークショップも開催するなど、消費者に最も近い場所で丁寧に日本茶を届けていった。
そして、満を持して2018年8月、待望のショップオープンを果たす。

店内にはお茶でけでなく、作家ものの急須が数多く並ぶ

 

―シングルオリジンのお茶にこだわる

 

「青鶴茶舗」で販売しているお茶は、フローランさんがこだわり抜いたシングルオリジンのお茶が中心。静岡、京都、宮崎、福岡、埼玉など、様々な産地の生産者から仕入れた多種多様なお茶が揃う。煎茶、紅茶、釜炒り茶など、商品の棚を見ているだけでもワクワクしてしまいそうなラインナップだ。
商品のパッケージには、お茶の知識がない人でも手に取りやすいように、茶葉の特徴に関する丁寧な説明が添えられている。

静岡本山産の「静-7132」という品種の煎茶

 

そして、気になるお茶があれば、フローランさんが嫌な顔一つせずに、試飲させてくれるのもうれしい。
「日本茶は種類、産地、品種など、多様な味わいを楽しむことができるのが大きな魅力です。お茶は自分で淹れることが大事なポイントだと思っています。自分の好きな急須で、お気に入りのお茶を淹れて、ゆっくりとお茶の時間を楽しんでほしいと思っています」

産地や品種などそれぞれのお茶の特徴を詳しく説明してくれる

 

フローランさんがそう話すように「青鶴茶舗」には、お茶の時間を楽しむためのすべてが詰まっている。

 

「おいしいお茶がほしい、お茶をもっと楽しみたい」

 

そう思う人は、まずお店に足を運んでみてほしい。一杯のお茶との出合いがきっかけとなり、フローランさんの人生に大きな転機が訪れたように、みなさんの暮らしや日常にも一杯のお茶が変化や新たな価値をもたらしてくれるかもしれない。

 

 

店舗情報

住所 東京都台東区谷中3-14-6海野ビル104
アクセス 千駄木駅2番出口から徒歩4分、日暮里駅北口から徒歩8分
電話番号 03-5842-1315
営業時間 11:00〜17:00
定休日 なし
URL http://www.thes-du-japon.com/

 

Editor

  • 三浦一崇
  • 三浦 一崇
    Kazutaka Miura

    NewTitleディレクター。雑誌編集者として5年、PR会社で広報マンとして3年、メディアの仕事に携わってきた経験を生かし、ジャーナリズム精神を忘れず、お茶のおもしろいことを発信中。

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