目指すは体験型日本茶専門店!
東京・三鷹の『西野園』は町のお茶屋の枠を飛び越えた!?

「お客様にお茶を買ってもらおうと思うのではなく、飲んでもらおうと思わないとダメなんです」そう話すのは、東京・三鷹の日本茶専門店『西野園』の店主・西野和広さん。「お茶を飲んでもらうためには、まず美味しくなきゃ飲んでもらえないし、美味しく飲む方法をちゃんと伝えないといけないんです」。
何事も有言実行する西野さんは、“お茶を美味しく飲む方法”を伝えるために様々な活動をしている。三鷹の地で、38年間お茶屋を営んでいる西野さんは、三鷹商工会の理事・商業部会長という肩書きの持ち主でもある。

笑顔が素敵な店主の西野和広さん

三鷹商工会の理事という立場で、みんなのためになることはないかなと模索していた時に、全国の自治体や商店街で開催されているミニ講座『まちゼミ』を「三鷹市でもやってみよう!」と、2018年2月に『三鷹まちゼミ』を開催。そこで、西野さんは『美味しいお茶の淹れ方(基本編)』や『美味しいお茶の淹れ方+老後のお金講座』を開き、参加者に“お茶を美味しく飲む方法”を伝えた。

京王井の頭線 三鷹台駅から徒歩1分の場所にある西野園

「まちゼミで講義をして一番びっくりしたのは、お茶は淹れ方が面倒臭いから、淹れてくれる人が少ないんだと思っていたけれど、そうではなく、美味しく淹れられないから淹れたくないと言う方が多かったことです」
コーヒーや紅茶はそこまで失敗することはないかもしれないが、お茶は失敗するとはっきり「おいしくない、渋い」という評価になりがちだ。
「でも、まちゼミでは参加者の方に1人ずつお茶を淹れてもらって、全員美味しく淹れることができましたよ。『すぐに家に帰って、家族に淹れてあげたい』と言って、全員お茶を買ってくれました(笑)」と西野さん。

 

確かに、「美味しい」と言って飲んでくれる人がいたら嬉しくて何回でも淹れたくなるだろう。美味しいお茶の淹れ方を伝えると、その人が淹れたお茶を飲んだ人が「美味しい」と褒める。褒められたら嬉しくてお茶を淹れる。
西野さんも参加者の笑顔を見て「お茶を淹れて褒められる人をもっと増やしたい」という思いが芽生えたという。まちゼミはコミュニケーションツールで、店側が一方的にしゃべるのではなく、参加者同士がおしゃべりをする交流の時間を多く取っている。

イベントでは西野さんが丁寧にお茶について教えてくれる

「“熱湯では淹れない”とか“お湯をさます時間は1分”といった淹れ方のポイントをご存知ない方も多く、まちゼミ参加者と私の間で、お茶を淹れることに対する認識にギャップがあると感じました。まちゼミなどを通してそのギャップを埋めていかないとお茶は飲んでもらえないなと思います」と西野さん。好評だったまちゼミは現在も継続して開催し、三鷹市民にお茶の魅力を発信し続けている。

 

そのほか過去には、三鷹台100円商店街まつりで抹茶の点て方体験イベントを実施したり、西野園が駄菓子屋に様変わりする駄菓子屋イベントを地域の子供達に向けて開催してきた。
「抹茶の点て方体験は小学校低学年の子も参加していて、抹茶は苦いんじゃないか?と心配したけど、やっぱり自分で点てると『美味しい!』と言うんですね。子供が点てる所をみんなで見て、みんなも笑顔になる。お茶って本来、そういう和を作るものじゃないか」と西野さん。
美味しい不味いよりも、もっと大事なことは“お茶タイム”に見られる会話や笑顔、その側にお茶があるって、とても素敵なことだ。

駄菓子屋イベントの様子。多くの子供達が西野園を訪れた

「体験型お茶屋になりたい」と話す西野さんは、地域との連携イベント以外にも西野園独自でイベントを開催している。
『西野園 星空さんぽ』は、2016年から月に1回開催され、お茶が好きな人以外に、星に詳しい人や星に興味がある人が参加しているという。
「これまでやってきたイベントではとにかく人をいっぱい集めればいいと思っていたけれど、小規模でやった方がお茶の魅力が伝わるのではないか。イベント=人集めというイメージもあるけれど、そうではなくてどれだけ仲良くなれるかが大事で『あの人からお茶が買いたい』と思ってもらいたい」。

星について学び、お茶の時間をみんな楽しむ「星空散歩」

西野さんは星が好きなのかと思えば、実はそういうわけではないそうだ。
三鷹市のイベントで知り合った天文解説員の唐崎さんに「土星の輪っかを見たいな」と言ったことがきっかけで、わざわざ望遠鏡を持って来てくれるならワイワイやりたいとイベントを企画したそう。
人の喜ぶ顔を見ることが好きなのかと思いきや「基本は人のためというより、自分のためだね。自分が楽しいからやってるよ」と西野さん本人が一番イベントを楽しんでいるようだ。

 

「一日中お茶屋の中にいるから、まるで動物園の檻の中にいるようだよ」と笑いながら自身について話す西野さん。そう感じるからこそ、お茶屋の店主でありながらも視野を外に向け、自らイベントを積極的に開催し、たくさんの人との触れ合いを大切にしているのかもしれない。

 

西野さんの父親は、茶どころ埼玉・狭山の茶農家の生まれで、実家を出てから東京・東麻布でお茶屋を創業した。西野さんはお茶屋の2代目として決められた道へ進むことに違和感を抱くことなく、大学時代は上野のお茶屋でバイトし、右も左もわからないまま大学4年の冬に西野園を開業。それ以来お茶屋として歩んできた。

店内には屋久島、八女、高知、静岡と全国から仕入れた様々なお茶が並ぶ

お茶一筋の人生を歩み、お茶への愛情や仕事に対する情熱があふれる西野さんだが、子供達には「あとを継げ」とは言わないという。「性格が違うから、嫌なことをやってもうまくいくわけない」とそれぞれの個性を活かし、押し付けずに見守る姿勢を崩さない。
西野さんは「小さな感動がお店にはないといけない。そうじゃなかった時は自分の努力が足りなかったんだと思うよ」と話す。押し付けないけれど、訪れてくれた人に小さな感動を与える西野さん。ついついお店で西野さんと話し込んでしまう人が多くいるのもうなづける。
お茶も、押し付けずに、作る人の個性、飲む人の個性を最大限に尊重する姿勢があるから、西野さんの元にはたくさんの人が集まってくるのかもしれない。

 

店舗情報
住所:東京都三鷹市井の頭2-7-23
電話番号:0422-48-0278
営業時間:10:00~19:00
定休日:日
URL http://nishinoen.com/index.html

 

 

Editor

  • おおいし ゆりな
  • おおいし ゆりな
    Yurina Ooishi

    人の”思い”を文章で伝えるライター。映画監督、俳優、スポーツを通じた国際展開をしている人物へのインタビューを中心に様々な媒体で活躍している。出身地は茶どころ静岡。お茶を飲み終わるまでが食事という家庭環境の中で育つ。最近は置物と化してる急須だが、お茶に関わる方に触れ合い、お茶を淹れる心の余裕を持ちたいと思っている。

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