東京・日本橋の地下空間に出現!
劇場型レストラン&ラウンジ『水戯庵』
- Text by Yurina Oishi
2018年3月、東京・日本橋に日本の伝統芸能×食文化を五感で味わうことができる劇場型レストラン&ラウンジ『水戯庵(すいぎあん)』がオープン! 日本茶ライターのおおいしゆりなが、気になる店内の様子をリポートします。
日本橋といえば、江戸時代から日本の街道の始まりの地として、人・物・文化が集まった土地。その地に、古くから佇む由緒正しき福徳神社に隣接している福徳の森の地下に「水戯庵」はあります。

「水戯庵」を手がけたのは、アートアクアリウム アーティストの木村英智さん。アートアクアリウムとは、 和をモチーフにデザインされた水槽と光・映像など、最新の演出技術が融合した水族アートの展覧会で、木村さんによるアートアクアリウムはこれまで日本各地で開催され、多くの人々に感動を与えてきました。
木村さんは「水戯庵」への想いをこう語っています。「変化に富んだ解釈の日本文化がたくさん発信されていますが、あえて変化ではなく正しい進化を続ける日本文化と出会える場所を創出しました」
そんな木村さんの想いを体現し、”日本を嗜み愉しむ”をコンセプトに掲げ「水戯庵」は誕生しました。

店内に足を踏み入れると、どこか地上とは異なる、ひんやりとした空気と共にお香の良い香りがお出迎え。お香の老舗「松栄堂」のお香による、和の雰囲気を醸し出す演出だそうです。さらにお香に加え、ヒノキのいい香りも漂います。
店内の中央に位置するのは、江戸時代に狩野派が描いた鏡板を移築したという舞台。ここでは毎日、日本最古の芸能である能や狂言、日本舞踊を始めとする伝統芸能が繰り広げられています。公演はランチタイム、ティータイム、ディナータイムに開かれ、公演時間は舞台のハイライトを切り取った20分前後ということもあり、伝統芸能にあまり馴染みのない方も気軽に楽しめます。

訪れた日の演目は、琉球舞踊宮城流師範・宮城茂雄さんが演じる琉球古典音楽と琉球舞踊女踊り。琉球舞踊と琉球古典音楽は、沖縄が琉球王国であった時代の宮廷の芸能が継承されたものだそう。伸びやかなテンポの三味線と琴の音が心地よく、張りがあって店内に響く歌声に癒されました。

琉球舞踊を目で楽しみ、三味線や歌を耳で楽しんだ後は、アフタヌーンティーを舌で堪能。ここで味わう寿司、お茶、お菓子はすべて歴史あるお店の自慢の品。現存する最古の江戸前寿司処「すし栄」の茶巾寿司は、薄焼卵焼きの中に椎茸、筍、ひじきなどを混ぜた五目寿司が入っていて、ほんのりとしょっぱく、京都の「老松」の主菓子は中の白餡が程よい甘さで味の変化を楽しめます。

コースの最後に提供されるのは京都の「亀末廣」の干菓子。そして、日本文化ならではの食を支えるお茶。お茶は京都の老舗茶舗「福寿園」のものです。
水出し煎茶はすっきりと瑞々しく料理を引き立たせ、抹茶と干菓子のコラボレーションは、渋さと甘さのループを永遠に続けられると思えるほど、両方の個性が活かされていました。
なお、ランチタイム(12:00〜13:30)とディナータイム(18:00〜19:30)では「すし栄」の江戸前寿司を中心としたコース料理が用意されています。

各メニューで使用している器も伝統工芸品。長崎県の閑静な神社境内に佇み、100年以上の歴史を持つ老舗料亭「富貴楼」から引き継いだものだそうで、江戸、明治、大正時代のヴィンティージものがずらり。器や膳を直接手にとって、食事できることも一流の物に触れることができるという心が踊るおもてなしです。

20時半から店内はラウンジタイムに。ラウンジタイム限定の創作お茶漬けなどのこだわりの一品料理と、「水戯庵」の酒セレクターである俳優・辰巳琢郎さんがセレクトした国産ワインや日本酒、ウイスキーなどが楽しめます。

伝統芸能を視る。日本の食文化を味わう。和楽器の音色を聴く。お香など和の香りを嗅ぐ。貴重で華やかな器に触れる。
まさに、五感で日本文化を味わいつくすことができる「水戯庵」。敷居が高いと感じる文化を、より身近に感じられ「日本って素敵だよ!」と伝えたくなるような魅力がここにはたくさん詰まっています。
店舗情報
住所 : 東京都中央区日本橋室町2-5-10 B1F
営業時間 : 11:30~24:00(LO 23:30)
電話番号 : 03-3527-9378
URL https://suigian.jp