慌ただしい日常を忘れ、ほっと一息
西鎌倉の日本茶専門店『鎌倉倶楽部 茶寮』

取材に伺ったその日は定休日にも関わらず「今日はやっていないの?」と、近所の常連さんが顔をのぞかせるほど、そのお店は鎌倉という土地に馴染んでいた。
「ゆっくりとした空間が好きで、忙しい場所は苦手なんです」とにこやかに話すのは、神奈川県鎌倉市にある日本茶専門店『鎌倉倶楽部 茶寮(かまくらくらぶ さりょう)の店主・齊藤亜紀さん。

『鎌倉倶楽部 茶寮』までは湘南モノレール・西鎌倉駅から徒歩2分

鎌倉からほど近い横須賀で生まれ育った齊藤さん。日本茶との初めて出会いは小学生の頃。母親に付いていったお茶会だった。
「お茶室の静かな空間や、ゆっくりとした雰囲気が好きでした」と齊藤さん。
その後、茶道の先生をしていた叔母の勧めで、鎌倉にある裏千家の青年部に入部するなど、茶道と鎌倉には小さい頃からずっと縁があった。

齊藤さんが笑顔で迎えてくれる

日本茶を学び、走り続けた13年

 

社会人になってからも「もっと茶道を学びたい、もっとお茶について知りたい」と想い続け、仕事でもお茶に関わることができたらと考えていた。そんなある日、東京・銀座にある日本茶専門店を訪れ、ほっとできる空間作りを大切にしているそのお店に心を奪われたという。
齊藤さんは何度かお店に通ううち、その空間で働きたいという想いが募り、ついにはカウンターを越えて「スタッフにさせてください!」と思い切ってお茶の世界に飛び込んだ。

 

そこから待ち望んでいた、お茶との本格的な関わりが始まった。
齊藤さんはそのお店に13年間勤務する中で、より深く日本茶について学んだ。幾度も茶農家のもとを訪れ、お茶に真っ向から向き合い、触れ合った。そうしているうちに、農家一人一人、それぞれの想いが詰まっているお茶のどれもが愛おしく思えるようなっていた。

 

その一方で、東京を中心とした生活を送る中で、働けば働くほど、自分の心に余裕がなくなっていることに気づく。
好きなお茶を仕事にしていても、日々の業務のことだけを考える毎日が続く中で、客観的に自分を見つめ直そうと思い、お茶の世界から少し距離を置くためにお茶を飲まないようにした時期もあったそうだ。しかし、お茶への愛着がそう簡単に失せるはずもなく、気づいたらまた茶葉を手にとってしまう魅力がお茶にはあったのだという。

 

「東京で働いていた時は、ひた走っていて、知らないうちに無理を重ねていたのかもしれません」と当時を振り返る齊藤さん。

 

そして、ほっとできる空間を提供する側ではなく、自分自身もほっとできる空間に身を置きたいという想いが段々と強くなり、独立を決意。それをきっかけに、齊藤さんがほっとできる空間で、こだわりのお茶を提供する『鎌倉倶楽部 茶寮』の誕生に繋がっていった。

木の温もりに包まれた趣のある店内

四季の移ろいを楽しみながら

 

『鎌倉倶楽部 茶寮』がオープンしたのは2017年9月。お店に並ぶお茶は、すべて齊藤さんが選んだものだ。
「お茶を飲んだ時に鼻に抜ける香りや、飲んだ後に舌に残る余韻など、それぞれに個性があり、茶畑の風景が浮かぶようなお茶を選んでいます。これからもお茶の種類を増やして全国のお茶を広めていきたいです」と齊藤さん。
静岡・天竜や京都・童仙房の煎茶をはじめ、釜炒り茶や和紅茶など20種類ほどの個性豊かな日本茶が楽しめる。中でも新潟県村上市で栽培される在来品種の煎茶は、独特の力強い風味が際立つおすすめのお茶だ。

メニューに並ぶ選りすぐりのお茶は店頭で購入もできる

“お客様にゆっくりくつろいでもらいたい”という想いと共に、齊藤さんが大切にしていることのひとつに、“四季の移ろいを楽しんでもらいたい”という想いがある。『鎌倉倶楽部 茶寮』では、二十四節気(にじゅうしせっき)と呼ばれる、日本古来の暦を取り入れ、1年を24等分した季節を表した言葉をテーマにし、季節の移ろいをお茶とお菓子で伝えている。

 

「二十四節気セット」は、運ばれてくるプレートから好きなものを選ぶ。季節を表現したお菓子の数々は見た目もかわいらしく、味を確かめたくなるものばかりだ。
「二十四節気である立春や夏至などは、生活している中で気にとめる事が少なくなっていますが、こちらでお茶やお菓子を召し上がっていただく事で、四季を感じてもらえれば嬉しいです」と齊藤さん。

「二十四節気セット』のプレート


上質なモノへのこだわり

 

『鎌倉倶楽部 茶寮』ではお茶を注文すると、自分が使う急須を選ぶことができる。齊藤さんがセレクトした急須は、職人の想いと技術が詰まった作家物が中心。その中からお気に入りの急須を選んで、一煎目は店側で淹れてくれるが、二煎目以降は、急須を使って自身のペースで味わうことができる。こだわりのお茶を上質な急須で楽しめる機会はとても貴重だ。

棚を開けると急須がズラリ

「急須を持っていないお客様も多くいらっしゃいますが、急須を選ぶことが楽しいと言って通ってくださる方もいます。土で作られた急須の感覚を感じながら、お茶を楽しんでもらいたいです」と齊藤さん。

お気に入りの急須で味わう一杯のお茶

店内には、齊藤さんがセレクトした福岡県久留米市のブランド「うなぎの寝床」のもんぺや雑貨などを販売しているコーナーもある。もんぺは齊藤さんの日常生活の相棒にもなっている。はき心地が良く、お店にいる時はもちろん、自宅で家事をする時や買い物に行く時にもはいているそう。

暮らしを豊かにしてくれる様々なアイテムが揃う
急須の品揃えも豊富

小学生から年配の方まで幅広い世代のお客様が訪れる『鎌倉倶楽部 茶寮』。一度席に座ったら、長居する方がいるのもうなずける、心地よい空気が流れている。この空間は、都会の忙しい時の流れの中、見ないふりをしている自分の心と身体の些細なズレをそっと直してくれるはずだ。

 

【店舗情報】
住所 神奈川県鎌倉市津1040-50
電話番号 0467-32-1000
営業時間 11:00 ~19:00(L.O.18:30)
定休日 火、水曜
URL https://kamakura-club.com/teahouse/

 

Editor

  • おおいし ゆりな
  • おおいし ゆりな
    Yurina Ooishi

    人の”思い”を文章で伝えるライター。映画監督、俳優、スポーツを通じた国際展開をしている人物へのインタビューを中心に様々な媒体で活躍している。出身地は茶どころ静岡。お茶を飲み終わるまでが食事という家庭環境の中で育つ。最近は置物と化してる急須だが、お茶に関わる方に触れ合い、お茶を淹れる心の余裕を持ちたいと思っている。

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