日本茶カクテルの真髄がここに
銀座のカクテルバー『ミクソロジーサロン』

東京・銀座6丁目、世界各国の人々が行き交う商業施設「GINZA SIX」の13階に店を構える『ミクソロジーサロン』。日本茶を中心としたお茶を使ったカクテルを専門にしているバーだ。
店名にあるミクソロジー(Mixology)とは、英語の混ぜる(Mix)と、学問(Ology)を掛け合わせた造語。その言葉が示すように、混ぜることを探求し、常識に捉われない自由な発想でつくられた革新的なカクテルは、ミクソロジーカクテルと呼ばれる。1990年代にロンドンやサンフランシスコのバーで広まったこのミクソロジーというスタイルが、時代と共に進化を続け、数年前から日本でも注目を集めている。

ミクソロジーサロンでは2017年4月のオープン以来、カクテルの素材にお茶を使い、ミクソロジーの手法によって個性的なお茶のカクテルを提供し、訪れる人を魅了している。
今回はバーのオーナーであり、日本のミクソロジー界における草分け的存在の南雲主于三さんにお話を伺った。南雲さんは現在、ミクソロジーサロンの他にも東京都内でミクソロジーをテーマにしたバーを4店舗経営しながら、時間を見つけては店頭に立ちシェイカーを振っているトップバーテンダーだ。

ミクソロジーカクテルを作る南雲主于三さん

バーカウンターに座り、メニューを開くと、まず目に留まるのが「玉露のカクテルコース」。南雲さんのミクソロジー哲学が落とし込まれ、玉露の魅力を最大限に生かした珠玉のコースである。
一煎目は、絞り出し急須を使い、玉露の旨みを極限まで抽出して味わう「雫茶」。玉露の奥深い世界へ誘ってくれる。続く二煎目は、南雲さんのカクテル作りの経験とお茶への愛情が詰まった「玉露カクテル」だ。

玉露の旨みを嗜む一煎目

この一杯のレシピが生まれるまでのストーリーを南雲さんが振り返ってくれた。
「様々な種類のお茶のカクテルを作りましたが、玉露ほどわがままなお茶はなかったですね。何のお酒を合わせても玉露のよさが消えてしまうんです。温かいカクテルにしてみたり、本当にいろいろなトライをしました。玉露に関しては今までのカクテル作りの経験が通用しなかったですね。ただ、作るからには玉露に対して、失礼がないようなカクテルを作りたい。妥協したくない。その一心でした」
試行錯誤を繰り返し、たどり着いた答えは、二煎目の玉露に少量のアイスワインとアイラモルトを加えることだった。

玉露の新境地に出合える二煎目

「ようやく見つけ出した組み合わせがアイスワインとアイラモルトのラフロイグでした。ワインはお茶の旨み成分であるテアニンとよく合い、アイラモルトのスモーキーさが玉露の風味とマッチしました。バーテンダーとして玉露をどうにかしたいという思いが強かったので納得できるものができてまずはホッとしました」と南雲さん。
この玉露カクテルは、ミクソロジーの哲学である、混ぜることへのあくなき探求が生み出した賜物と言える。

 

そして、三煎目は、玉露をお湯で抽出して味わう。三煎目とは思えないほどの甘みが楽しめる。横に添えられた玉露の茶葉を口にしたところで、飲みものの枠を超えた玉露という存在の大きさに気づく。日本の茶文化において、煎茶とは異なる存在感を放つ玉露。このコースはミクソロジーの真髄と共に、玉露の本質に迫ることができる格別な時間となるはずだ。

玉露の奥深さを知る三煎目

メニューには煎茶、玉露、抹茶、ほうじ茶といった日本茶を中心に、台湾の烏龍茶やそば茶などを使ったカクテルなど独創的なカクテルが目白押しだ。南雲さんにとって、カクテルの素材としてのお茶の魅力はどこにあるのだろう。
「日本茶は産地や品種も多様で、煎茶や玉露だけでなく紅茶や烏龍茶もあり、世界中には様々なお茶があります。それらのお茶はどれも汎用性が高く、バーテンダーのカクテル作りのニーズにマッチします。お茶とお酒の文化が交わることで、双方の新しい可能性が生まれていくのではないでしょうか」と南雲さん。

 

玉露のコースを満喫した後におすすめなのは「煎茶ジントニック」。煎茶をジンに漬け込んだ特製スピリッツを使用し、煎茶とウォッカの風味が絶妙に合いまって、すっきりとした飲み心地がたまらない人気カクテルだ。

「煎茶ジントニック」

「煎茶にジン、玄米茶にキンカン、そば茶にパイナップル、ほうじ茶にバーボン。お茶にスピリッツやリキュールを加えると、お茶に羽が生えたように飛んでいくんです。お茶のカクテルは、あくまでお茶が中心であって、お酒を枝葉のように付け足していくことができればと思っています」と南雲さんがお茶のカクテルづくりへの想いを話してくれた。

ミクソロジーの真骨頂と言える「そば茶とパイナップルと味噌のカクテル」

ミクソロジーサロンでは使用するお茶へのこだわりも深い。南雲さん自ら茶産地を回り、玉露は京都・宇治や福岡・八女から、煎茶は佐賀・嬉野や埼玉・狭山、鹿児島などから仕入れている。
そして、お茶の生産者との交流も欠かさないのだという。
「私だけでなく、スタッフも佐賀や福岡などの茶産地に訪問し、生産者さんと直接お話しさせていただいています。どういう風にお茶が作られ、生産者さんがどういう想いでお茶を作っているのかを知ることが大事だと思っています」と南雲さん。ミクソロジーサロンで提供されるカクテルの一杯一杯には生産者の想いも詰まっている。

最後に南雲さんにこれからについて聞いてみた。
「お酒のプロとして新しい価値を届けたい。そして、10年、20年後にはお茶を使ったカクテルを世の中のスタンダードにしていたい」と熱く語ってくれた。お茶とお酒への探究心に溢れる南雲さんと、ミクソロジーサロンの今後の動きから目が離せない。

 

 

店舗情報
住所:東京都中央区銀座6-10-1 GINZA SIX 13F
電場番号:03-6280-6622
営業時間:11:00〜23:00 (LO 22:30)
定休日:なし
URL  https://ginza6.tokyo/shops/1239

Editor

  • 三浦一崇
  • 三浦 一崇
    Kazutaka Miura

    NewTitleディレクター。雑誌編集者として5年、PR会社で広報マンとして3年、メディアの仕事に携わってきた経験を生かし、ジャーナリズム精神を忘れず、お茶のおもしろいことを発信中。

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