”茶リスタ”とバリスタがタッグを組んだ。
日本茶スタンド『Saten(サテン)』が4月23日、東京・西荻窪にオープン

「Satenで一日を始め、Satenで一日を終える。普段の生活の中に気づいたら溶け込んでいるお店になりたい」


「日常に溶け込むお店になりたい」。その言葉はまるで、口に出せば出すほどその通りになっていくような、とても想いのこもった言葉に聞こえた。
2018年4月23日、日本茶スタンド『Saten(サテン)』が東京・西荻窪にオープンした。

SatenまではJR西荻窪駅南口を出て徒歩5分

2人の男によるSatenの物語が始まった

 

Satenで提供される日本茶や茶器から、使用する道具、店内のインテリアまで、そのすべてにストーリーがある。適当に選んで使っている、置いている物は1つもない。お客様に提供したいものばかりが並んでいるという店内には「これ素敵ですね」とつい口に出したくなるものばかり。
「お店は何がきっかけになって、日常的に来店してもらえるようになるかわからないので、きっかけ作りのためにいろいろとこだわっています」と話すのは、Satenのオーナーである日本茶バリスタ、通称“茶リスタ”の小山和裕さん。
小山さんは2018年3月まで、吉祥寺の日本茶&コーヒースタンド「UNI STAND(ユニスタンド)」の店主としてお店を切り盛りし、日本茶スタンドの新たな可能性を切り開いた立役者のひとり。

オーナーの小山和裕さん(左)と藤岡響さん

「この場所は元々居酒屋だったんです。前のお店の壁などを部分的にそのまま残して、和紙のカウンターにしたり、昭和の喫茶店にあったようなベルベットの椅子などを置いたり、どこか日本らしい懐かしさを感じさせつつ、北欧のテイストも取り入れて、柔らかさと温もりのある店内に仕上げました」。
そう語るのは、もう1人のオーナーである元ブルーボトルコーヒーのバリスタトレーナー、藤岡響さん。藤岡さんはオープンにあたり、友人の職人と一緒に内装に手を入れ、自ら塗装も行ったのだという。

店内は落ち着いた空間でついつい長居してしまいそう

日本茶とコーヒーの世界が一つのスタンドで融合する

 

サードウェーブコーヒーを牽引し、コーヒー業界で活躍してきた藤岡さんに、日本茶の世界をどう見ているのかと伺うと、「バリスタはお湯の温度や量、豆の挽き方などを試行錯誤して研究し、抽出することが仕事です。僕は日本人なので、研究するために産地に行こうとすると、海を渡らないと行けません。それに比べ、日本茶は身近な場所で栽培しているから、栽培方法を見に行くことができます。でも産地まで行って日本茶の抽出方法を研究している人は少なく、昔からお茶の淹れ方自体も進化していないということに気付いて、それでは文化としてもったいないなと思いました」とバリスタならではの意見が返ってきた。

抽出することへの飽くなき探究心を持った2人

「日本茶は日本人の生活に溶け込んでいて、生産技術も高い。でもそれが当たり前になりすぎていて、お茶農家から一杯のお茶になるまでに通ってくる様々な工程が伝わっていない。その結果、お茶の産地に想いをはせる人が少ないのではないか?」「コーヒーの抽出方法に比べて、日本茶は抽出方法が研究されていないのではないか?」
藤岡さんはコーヒーと日本茶という2つの業界を俯瞰したとき、日本茶に対するそのような疑問を抱いた。そんな時に出会ったのが、日本茶スタンドを運営していた小山さんだった。

 

「実際にはコーヒースタンドが、当たり前のように日常に溶け込むことって難しいんですよね。日常に溶け込むスタンドの文化を日本でもっと発展させたいと思っていた時に、小山さんに出会い、日本茶や日本茶スタンドの可能性に気付きました。Satenやスタンドの文化を通して、当たり前に日常に溶け込んでいる日本茶の魅力を再発見してもらうきっかけになればいいなと思います」と藤岡さん。
きっとこれから藤岡さんは、コーヒー業界で培った経験を頼りに小山さんと共に、日本茶の抽出方法や伝え方を探求し続け、そこから日本茶の新たな可能性を切り開いていってくれるはずだ。

Satenの印象的なロゴは茶畑、茶葉、水がモチーフになっている

「日本茶やコーヒーが気軽に飲めるスタンドを作りたい」。日本茶の世界と、コーヒーの世界で活躍してきた2人は、違う角度からその同じ想いを共有している。その想いは、時には重なり、時には離れて広がっていく。日本茶とコーヒーを抽出する者同士で共有する想い、それぞれのプロとして独立した視点で意見する想い。
店名の『Saten』には、日本のカフェという茶店(さてん)の他に、サテン生地の意味合いも持つという。日本茶とコーヒーという2つの業界の糸が折り重なって、サテンのような生地を織っていく。
なるほど、2人の掛け合いを見ていると、日本茶とコーヒーの融合でどんどん布のように広がっていくイメージが浮かんできた。

 

生産者の想いを一杯のお茶に込めて

 

日本茶はコーヒーに比べて産地に想いをはせる人が少ないと感じた2人は、茶農家を直接訪ねて、生産者の顔が見える日本茶を提供している。
「僕らがやっているスタンドは、お客様に日本茶を提供する上で重要な立ち位置にいます。『このお茶おいしくないね』と言われた瞬間に、農家さんがやっていることが無意味になってしまう。僕らが淹れる一杯が農家さんの想いをお客様に伝えていることにもなるんです」と小山さん。

お客さんの目の前で一杯いっぱい丁寧に淹れてくれる

『Saten』のコンセプトには、“Leaf to Relief (茶葉から一服へ)というフレーズが掲げられている。茶葉からお客さんの元に届く一杯まで、こだわりと責任をもって提供するという意味が込められ、そこには、目に見えるものだけではなく、生産者から引き継がれた目に見えない想いも含まれているようだ。

 

香り高く、品質の良いものを選んでいるという厳選された茶葉は、全10種類で、季節によって2種類ずつ提供される。
『Saten』で出される日本茶は、シングルオリジンという単一農園・単一品種の茶葉を使用している。こだわりの理由について小山さんは、「お茶は同じ産地でも、年によって農家さんによって味が変わります。農家さんごとの歴史や作り方が味に表現されている。それをダイレクトに味わえるのがシングルオリジンなんです」と語る。ここにも“農家さんの想いをお客様に届けたい”という2人の想いが見えた。

静岡・掛川の生産者「ひらの園」のシングルオリジン
小山さんが作る「抹茶ラテ」もおすすめの一品

主に藤岡さんが扱うコーヒーメニューも、素材の良さをダイレクトに伝えている。「日本茶スタンドなので、コーヒーはシンプルなメニューにしました。ブラジルとグアテマラのブレンドで豆の良さを感じられる飲みやすいもの。フルーティーで酸味や甘みを感じられるコーヒーです。シンプルなメニューだけど、テイスティングもこまめにして管理していますし、コーヒーも抜かりなく出していますよ」と、キラリと笑いながら話す藤岡さん。
他にも、ジン、ラム、クラフトビールなどのお酒や、コーラの種子であるコーラ・ナッツから作られた優しい甘さのコーラなど、それぞれにストーリーを持ったこだわりのメニューが用意されている。

提供されるすべてのメニューに2人のこだわりが詰まっている

1杯目は日本茶を飲んで、2杯目はコーヒーを飲んでみてもいいし、ふらりと夜お酒を飲みにきてもいいし、コーラ片手にインテリアについて語ってもいいし、何を飲むのも、何を語るのも『Saten』では自由なのだ。
どんな想いを持って訪れても、小山さんと藤岡さんは暖かく迎え、包み込んでくれる。お客さんとの出会いも、サテン生地の糸のように、重なっては離れ、心地よい距離を保ちながら広がり、形になっていく。
何がきっかけで訪れても、日本茶の新たな魅力にはまる糸口につながりそうだ。

 

店舗情報
住所:東京都杉並区松庵3-25-9
電話番号:03-6754-8866
営業時間:10:00~21:00
定休日:不定休
facebook https://www.facebook.com/saten.jp/

Editor

  • おおいし ゆりな
  • おおいし ゆりな
    Yurina Ooishi

    人の”思い”を文章で伝えるライター。映画監督、俳優、スポーツを通じた国際展開をしている人物へのインタビューを中心に様々な媒体で活躍している。出身地は茶どころ静岡。お茶を飲み終わるまでが食事という家庭環境の中で育つ。最近は置物と化してる急須だが、お茶に関わる方に触れ合い、お茶を淹れる心の余裕を持ちたいと思っている。

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